魚のDHA・EPAが「うつ病改善」に効果があるワケ
脳や血液だけでなく、DHAやEPA(オメガ3系の脂肪酸)は心の問題である「うつ病」にも効果があるといわれています。
現在の研究状況を調べました。
目次
魚のオメガ3系の脂肪酸はうつ病改善に効果がある?
魚に多く含まれているDHA・EPAなどのオメガ3系の脂肪酸は、うつ病改善に効果があるといわれています。
うつは、ストレスなどの外的要因により、脳内の神経伝達物質やホルモンが失調することでかかるといわれている病気です。
神経伝達物質のひとつ、セロトニンはうつに深い関係があると考えられている物質です。
セロトニンは感情のコントロールに大きな影響を及ぼし、幸せ感を感じさせる「多幸ホルモン」とも言われている物質です。
成長ホルモンの一つである「メラトニン」も、うつに深い関係があるといわれています。
うつ病の主な症状として不眠がありますが、メラトニンは健康な睡眠のために働きかけるホルモンです。
DHA・EPAに代表されるオメガ3系の脂肪酸は、セロトニンとメラトニンに働きかけることができるのではないかと言われています。
なぜ効果があるのかという詳しいメカニズムはまだ解明されていません。
ですが、魚をたくさん食べる国の人間と魚を食べない国の人間を比べた時、明らかに魚をたくさん食べる国のほうがうつ病の発症率が低いことがわかっています。
オメガ3系の脂肪酸とうつ病の関係は、多くの研究機関で盛んに研究されているテーマです。
「DHAやEPAはうつスコアを大きく改善する」という結果は出ているものの、肝心のメカニズムがわかっていないため、薬になるなどの成果はまだありません。
うつスコアとは、うつ病自己評価尺度(CES-D)とも言われる世界中で利用されているスコアです。
DHAとEPAの摂取でどれだけ変わるの?
うつスコアの変化を調べた実験があります。
うつ病患者22名を2つのグループに分け、毎日DHAとEPAを摂るグループと、取らないグループに分け、8週間の間うつスコアの変化を観察しました。
すると、DHA・EPAを摂取したグループはDHA・EPAを摂取していないグループに比べておよそ10点ほどうつスコアの点数が下がったのです。
下がったということはうつ症状が改善したということを指します。
どのくらいの量を摂ったらうつ症状は改善されるのでしょうか?
うつ症状を改善するDHA・EPAの摂取量
この時摂取したDHAは1日2,200㎎、EPAは1日4,400㎎でした。
合わせて6,600㎎もの大量のDHA・EPAを摂取したことになります。
DHAは1日3,000㎎で副作用(吐き気や下痢、出血や皮下出血など)が出るといわれています。
もちろん全員にではなく、全体の数%の割合です。
DHA・EPAの摂取量目安は1日合わせて1,000㎎と言われています。
その約6.6倍もの量を摂るわけですから、この方法を試したい方は医師の観察下で行うことが望ましいといえます。
DHA・EPAの摂取量は国によって数値が変わります。
日本では1,000㎎ですが、アメリカでは3,000㎎摂取しても影響なしとされています。
欧州食品安全機関(EFSA)では1日5,000mgまで大丈夫だといわれています。
これらはもともと魚を食べる習慣のある国かそうでない国かの差もあると思われます。
日本人はもともと肉よりも魚を食べる習慣のある国です。
そのため、1日1,000㎎くらいが適切だということになっているのかもしれません。
魚をあまり食べない習慣のある国では推奨量が多いのもなんとなくうなづける気がします。
それでも1日6,600㎎は多い量です。
この量を試したい場合は、副作用のリスクも含めて医師に相談することをおすすめします。
DHA・EPAは食事からも摂取できるので、魚好きの人だと1日7,000㎎を越えてしまう可能性もあります。
その分、副作用は出やすくなると考えられています。
この方法が絶対におすすめできない人
- 血液凝固阻止剤を服用している人
- もともと血小板が少なく、血が止まりにくい人
- 血圧を低下させる薬を飲んでいる人
上記のような人は、この方法は試さないことをおすすめします。
うつ病ってどんな病気?
うつ病とは、日本人の6人に1人はかかっているといわれる病気です。
- 意欲低下
- 感情の摩耗(心から喜べない、笑えない)
- 眠れなくなる
- 朝起きられない
- 体が鉛のように重い(実際に痛みを感じる人もいます)
- 集中力、思考力の低下
- 自殺願望が生まれる
これらの感情のうち、2つ以上が当てはまり、さらに2週間以上続くようだとうつ症状に陥っている危険性があります。
早めに心療内科を受診しましょう。
うつ病は「心が風邪を引いた状態」と言われます。
予防として普段から魚を食べたり、DHA・EPAのサプリメントを規定の範囲内で飲むのもいいですが、外的要因が原因になっていることも多々あります。
風邪を引いたら内科に行くように、心が風邪を引いたら早めに心療内科に行ってください。
公開日:2017年07月01日 最終更新日: