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血液をサラサラにする薬まとめ


なぜ血液をサラサラにしなければいけないか?というと、動脈硬化による血栓症を防ぐためです。

血の塊が血管に詰まってしまうのが血栓症です。

血栓ができてしまうのには2つの原因があります。傷ができると、かさぶたになります。

あの状態は、

  • まず血小板が固まって壁を作る
  • 次に血液中の凝固因子がノリ状の物質を作り、血を止める

という2つの段階を踏んでできています。

この段階は、血栓ができる段階と同じです。

血小板が固まり、そのあとで凝固因子がノリ状の物質を作ってしまって血栓ができるというメカニズムになっています。

ノリ状の物質は、フィブリンという名前です。

血液をサラサラにするためには、血小板と凝固因子にアプローチすることが必要です。

そのため、薬には「抗凝固薬」と「抗血小板薬」の2種類が存在します。

どちらが処方されるかは、患者さんの血液の状態によります。

ですが、明確にどちらの原因が多く作用しているかは線引きが難しい場合もありますので、同時に処方されることもよくあることです。


抗凝固薬


血液中の凝固因子の働きを抑制するための薬です。

飲み薬としては1種類しか認可されていませんが、使用上の注意が必要です。

注射薬はたくさんあり、特に重篤な症状になった場合や状態の急変・手術の際などに使われます。

今のところ飲み薬としてはワルファリンしかありませんが、次世代薬としての新しい経口抗凝固薬の開発が進んでいるところです。

近い将来、新しい薬が出てくることになるでしょう。

ワルファリンは作用の強い薬なので、使用には注意が必要です。

抗凝固薬はどんなものがあるか


  • 飲み薬…ワルファリン
  • 注射薬…ヘパリン、低分子ヘパリン、アルガトロバン、ダナパロイドナトリウム、フォンダパリヌクス

抗凝固薬を飲んではいけない人


※ここでは飲み薬のワルファリンについて解説します。

妊娠中や授乳中の妊産婦さんが飲むと、作用が母体よりも胎児や赤ちゃんのほうに良く出てしまう性質があります。

ワルファリンはビタミンKの働きを抑えてしまう働きがあります。

ビタミンKは赤ちゃんの体を作るのに必要な成分なので、ビタミンKの働きを阻害してしまうワルファリンは妊産婦が飲むのはすすめられていません。

妊娠6~9週間のごく初期のころに飲んでしまうと赤ちゃんの催奇形性があるということが報告されています。

妊娠6~9週間は人によってはまだ妊娠に気が付かない状態です。

妊娠を考えている女性でワルファリンの投与を受けている人は、早めに医師と相談することをおすすめします。

抗凝固薬を飲む上での注意


定期的な検査が必要です


ワルファリンは、凝固因子の栄養になるビタミンKの働きを抑えることによって凝固因子の働きを抑制します。

直接凝固因子に作用する薬ではないので、食事内容によっても効果が変化します。

そのため、服薬中は定期的な検査が必要となります。

出血が止まりにくくなります


血を止まりにくくする薬なので、出血が止まりにくくなります。

ひどいけがはもちろんですが、出血を伴うような手術をしなければならないようなときは危険です。

怖いのは交通事故ですが、ワルファリンを飲んでいることがわかれば、ビタミンKやプロトロンビン複合体濃縮製剤などを使えば凝固因子の働きが復活しますので、いつも身に着けているもの、たとえば財布の中などにワルファリンを服用している旨を書いておくのもよい方法です。

服用を中止するのは良い方法ではありません。

そのため、一般的な抜歯や軽い処置などのときは飲む量を減らしたりすることで対処することがあります。

事前に医師との相談が必要です。

抗凝固薬の成分「ワルファリンカリウム」の副作用


発疹やじんましんなどの皮膚障害、発熱や脱毛などが報告されています。

重い副作用として考えられるのは臓器内出血(消化器系なら黒色便、脳出血なら頭痛、肺出血なら胸痛など)、吐き気や黄疸などの肝機能障害などが挙げられます。

作用の強い薬なので、副作用も出ることが考えられます。

いつもと違う体調の変化を感じた時には、すぐに医師や薬剤師に相談してください。

食べ物との食べ合わせも注意が必要です。

納豆やクロレラ、青汁、モロヘイヤなど、ビタミンKが豊富に含まれているものを食べてはいけません。

納豆のナットウキナーゼには腸内でビタミンKを合成する働きがあります。その働きは72時間も続きます。

ビタミンKは凝固因子の栄養となってしまいますので、抗凝固薬の働きを阻害することになってしまいます。

医師から注意が必ずありますので、守るようにしてください。


抗血小板薬


血小板が結合して固まるのを防ぐ薬です。

血小板同士を固めてしまう酵素(シクロオキシゲナーゼ)の働きを阻害するものや、血小板の働きそのものを抑制するものなど、さまざまなアプローチがあります。

血小板は、さまざまな仕組みで働いています。どの仕組みを阻害する薬を選ぶかは、主治医の判断によります。

医師や薬剤師の説明を十分理解して服用するようにしてください。

抗血小板薬はどんなものがあるか


cAMPを増やす薬


血小板が固まる働きを血小板凝集と言いますが、血小板凝集を阻害する成分が血液中にも含まれています。

これをcAMP(環状アデノシン一リン酸)といいます。

血が固まりにくくなる作用を持つので、cAMPが増えるようなアプローチを持つ薬があれば、血小板は凝集しにくくなり血液はドロドロになりにくくなります。

cAMPを増やすには、アデニル酸シクラーゼという酵素を活性化させる必要があります。

アデニル酸シクラーゼを活性化させる薬
  • パナルジン(チクロピジン塩酸塩)
  • プラビックス(クロピドグレル硫酸塩)

血小板の膜にある受容体を刺激して、アデニル酸シクラーゼを活性化する薬
  • プロサイリン(ベラプロストナトリウム)
  • オパルモン(リマプロストアルファデクス)

cAMPの代謝を促す酵素を阻害することでcAMPを増加させる薬
  • プレタール(シロスタゾール)
  • ペルサンチン(ジピリダモール)
  • イブジラスト(ケタス)

cAMPの代謝を促す酵素をホスホジエステラーゼといいます。

これらの薬は、ホスホジエステラーゼ阻害薬と呼ばれることもあります。



TXA2の合成を阻害する薬


TXA2(トロンボキサンA2)とは、血小板の凝集を促す成分です。

TXA2ができるのを阻害するアプローチをする薬を使うことで、血小板が凝集しないよう働きかけることができます。

シクロオキシゲナーゼを阻害してTXA2を作らせない薬
  • バファリン配合錠A81mg(アスピリン・ダイアルミネート配合剤)
  • バイアスピリン(アスピリン)

血小板の脂質中のEPAを増やすことによってTXA2の合成を阻害する薬
  • エパデール(イコサペント酸エチル)

EPAは青背の魚の油に含まれているオメガ3脂肪酸です。

血液をサラサラにする効果があるので、サプリメントがたくさん出ています。

エパデールはEPAを使った薬になるので、ほかのEPAのサプリメントと一緒に飲むことはおすすめできません。

エパデールに限らず、血液に作用する薬を飲んでいる時は、「血液をサラサラにする」という効果のあるサプリメントは飲まないほうが良いようです。

血液を凝集させない薬は、皮膚内出血を起こしたり医師の想定よりも血液に及ぼす影響が大きくなったりします。

サプリメントを取り入れてもよいかどうかは、その人それぞれの症状と薬の処方されている量によります。

エパデールの効果と副作用について【ジェネリック医薬品など】

セロトニンの受容体を阻害する薬
  • アンプラーグ(サルポグレラート塩酸塩)

セロトニンにも、血小板凝集を促す働きがあります。

血小板の膜の上にある受容体を刺激して血小板を凝集させてしまいます。

セロトニンを血小板表面で受け取るセロトニン受容体そのものを阻害することによって、血小板を固めないというアプローチをする薬です。

セロトニンは多幸感を感じるホルモンとして脳のためになくてはならないホルモンです。

セロトニン自体の働きを阻害する薬ではありませんので、安心して飲むことができます。

抗血小板薬を飲んではいけない人


胃潰瘍や腸に潰瘍がある人は飲むことがすすめられない薬です。

その際は、胃を保護したり腸を保護したりする薬と一緒に飲むことになります。

また、代謝が必要になってくる薬のため、肝機能障害や腎機能障害がある人は飲むことができない場合があります。

抗血小板凝集効果のある薬はさまざまなものがあるので、処方された薬をきちんと飲むようにしましょう。

薬には副作用があります。血液に作用する薬は体への影響も強いので、他の薬よりも少しだけ高い割合で起きてしまう副作用もあります。

副作用があまりにひどい場合は医師にしっかりと報告することが必要です。

ごくまれに重篤な副作用に発展することもあるからです。

副作用についてはあらかじめ理解をしておきましょう。

なお、どの薬を飲んだにしても定期的な健康診断や検査は必要です。


血液をサラサラにする薬の副作用について


すべての薬に共通する副作用


歯茎や鼻などの粘膜から出血することがあります。皮ふ内に内出血が起きることもあります。

血が止まりにくくする薬なので、なかなか止血されません。

特に口の中は乾燥しないので、血液の粘度が上がりにくくただでさえ血が止まりにくい場所です。

歯科治療を受ける際には必ず抗凝固薬を飲んでいることを伝えましょう。

症状によってですが、一度薬を休む「休薬期間」を取る場合と、出血が軽い治療だと思われる場合には薬を飲み続けている状態で歯科治療が許可される場合とがあります。

休薬期間は薬によって違います。

  • ワルファリン…4~5日前
  • アスピリン…7日~10日前
  • パナルジン…10日~14日間
  • プレタール…3日前
  • プラビックス…14日前
  • エパデール…7日~10日前

大量出血が予想される手術なのか、軽微な手術なのかで多少変わってくることがあります。

これは医師の判断によって行われます。

手術はもちろんですが、歯科治療の際も必ず歯科医に飲んでいる薬のことを伝えてください。

また、けがをしやすい肉体労働を行っている人は注意が必要です。

血が止まりにくくなっていることを周囲の人にも伝えておきましょう。

けがや事故の時、駆けつけてくれた救急車などにそのことを伝えてくれるかどうかで処置や、運ばれる病院などが変わる可能性があります。

けがをしないことが一番なので、くれぐれも注意して作業を行うようにしてください。


アスピリン、ネオアスピリン、バファリンの副作用


アスピリン喘息、胃潰瘍、消化管出血などの副作用が起きることがあります。消化管潰瘍がある人は服用できません。

バファリンは市販薬の名前にもなっていますが、市販で買うことのできるバファリンはこれほど強い副作用の心配はありません。

逆に、効果もこれほど強くありませんので、市販薬のバファリンを自己診断で血液をサラサラにする目的のために使うのは厳禁です。

過去、鎮痛薬や解熱薬で喘息を起こした人は、アスピリン喘息を持っている可能性があります。

その場合はアスピリン系の薬を飲むことはできません。

持病としてアレルギー性のあるアトピー性皮膚炎や喘息を持っている人は、医師に伝えることが必要です。

重篤な肝障害のある患者さんも、アスピリン系の薬を飲むことはすすめられていません。


ブラピックス、パナルジンの副作用


血小板が減少することによって紫斑病などになることがります。

初期症状としては発熱や貧血、血小板の減少などが挙げられます。

投与後2か月以内に起きることが多いので、この期間は体調の変化には注意してください。血液検査も必要です。

また、肝障害が起きることもあります。倦怠感や疲れやすさを感じるなど、いつもと違う症状が出る場合はご注意ください。


プレタールの副作用


血管を広げる作用があるため、頭痛や動悸などの副作用を感じることがあります。

ひどくな修理ると狭心発作につながる可能性も示唆されています。

頭痛の副作用は5%程度と、副作用としてはかなり高い割合で現れるようです。

CYP3A4阻害薬との併用には注意が必要です。


どの薬が使われやすい?


バイアスピリン、プラビックスがまず使われることが多い薬です。

それぞれについて、腸で溶けるもの、胃で溶けるもの、腎臓で代謝される(排泄される)もの、肝臓で代謝される(分解される)もの、とさまざまなので必ず使用に関しては医師の注意をよく聞くことが必要です。

血小板凝固薬に関しては、血が止まりにくくなるという副作用が必ずついて回るため、さまざまなアプローチが研究されています。

これからも新しい薬が開発されていくものと思われます。

歯周病など、出血を伴う病気を持っている場合は、簡単に血液をサラサラにする薬が使えないことがあります。

血が止まりにくくなると出血箇所がふさがらないため、細菌が体内に侵攻しやすくなってしまうからです。

血液は体の隅々まで関与する問題なので、全身症状を医師に報告しておくことが一番大切なことです。

歯科と医科は別々のため、情報を共有できるように自分が今受けている治療はもれなく医師に伝えるようにしてください。

薬を飲むことは煩雑さを伴い、また、血液をサラサラにする薬は他の病気の治療に関わってくるため、煩雑さを感じる人は多いものです。

「いつになったらやめられるのか」「いつまで飲み続けなければならないのか」という疑問も当然出てきます。


血液をサラサラにする薬はやめられる?


基本的に一生飲み続ける必要があります。

血液をサラサラにする薬が処方される時は1種類だけでなく、たくさんの種類が出ることがあります。

薬の治療が必要なほど血液状態が悪いときは、さまざまな危険因子を抱えていることがあります。

高血圧や糖尿病、脂質異常症などがそれに当たります。危険因子の発症リスクを防ぐため、どうしても薬は増えてしまいます。

それでも薬の処方に疑問がある人は、セカンドオピニオンを利用してください。自己判断で薬をやめることは危険です。


薬を飲み忘れた場合には?


薬を飲み忘れてしまった場合は、「半日以内ならなるべく早く気付いたときに」が正解です。

特にワルファリンなどは1日の摂取量が決まっているため、半日以内なら飲み忘れの分を飲んでもよいとされます。

ですが、半日以上たってしまっていたらその時は飲み忘れの分は飛ばして1回分を飲みます。

1日の処方量は半日を目安に計算されています。なので、半日を過ぎてしまったら飲まないほうが体のためです。

原則として薬の効果は効き目が切れるまでの時間を考慮して1日の回数が決定されています。

血液の状態はずっと安定しているほうが望ましいのです。飲み忘れないような工夫を行ってください。


血液が凝固してしまうのはなぜか?


血液が凝固してしまうのは、血液の健康状態が悪くなっている状態です。

健康な人の血液でも、血液自体はいつも凝集する特性を持っています。

その働きがないと怪我等で出血した時に血が止まらず、失血してしまうからです。

健康な人の血液は「サラサラ」とたとえられ、不健康な人の血液は「ドロドロ」とたとえられます。

これは、ただ単に水分不足などの問題ではなく、血がドロドロになりやすい食生活や生活習慣を送っているということが挙げられます。

血液が凝固しやすい食生活は以下の通りです。

  • 脂肪分や塩分の多い食事をとっている
  • お酒をたくさん飲む
  • 糖分をたくさんとる
  • 揚げ物などをたくさん食べる
  • 食物繊維をほとんどとらない
  • 暴飲暴食が多い

生活習慣では次のようなことが挙げられます。

  • 睡眠時間が少ない
  • 喫煙の習慣があり、ヘビースモーカーである
  • ストレスの多い生活を送っている


血液がドロドロになると何が起きるか?


細胞は、血液によって酸素と栄養分が運ばれます。

そのため末端の細胞まで栄養を届ける必要があり、心臓が押し出すポンプの働きによって細い血管の先にまで血液が押し出されます。

不健康な生活を送っていると、血がドロドロになります。

すると血管の内側に炎症が起き、そこがふさがれるように肥大していきます。

血液状態が悪い状態が長期化すると、血管そのものも弾力を失って劣化していきます。

この状態が動脈硬化です。

ドロドロになった血は、粘度が上がります。その中で血小板同士が固まり合い、血栓と呼ばれる小さな塊を作り出します。

血栓は血流にのって全身を流れます。血栓が太い動脈に詰まってしまうと、その先に血液が流れなくなり、酸素や栄養分がいきわたらなくなります。

こうして起きるのが脳梗塞や心筋梗塞です。

太い動脈に血栓が詰まった場合、動脈硬化を起こしていると大変なことになります。

血管が血圧に耐えられず、破裂することがあるからです。大動脈が破裂してしまう状態になると、命にかかわります。

命が助かっても、一時的に脳に酸素や栄養素が送られない状態になると、重い後遺症が残ることもあります。

血がドロドロの状態は、自覚症状がありません。何も生活に支障がないので、ついつい治療に足が向かなくなることもあります。

ですが、血液の状態は短期間で作り出されたものでなく、長期的な生活習慣の組み合わせです。

長期的な生活習慣で作られた環境を良いものに戻すには、薬がどうしても必要になります。

血液の薬は「飲み続けなければならない」というマイナス面がクローズアップされがちですが、命を守るためですので必ず医師の指示に従ってください。

健康的な生活を送ることで、病気の進行をゆっくりにすることができます。

ぜひ、適切な治療を受けて健康寿命を延ばし、動脈硬化や高脂血症から体を守る生活習慣を身に付けましょう。

参照サイト:国立循環器病研究センター
http://www.ncvc.go.jp/cvdinfo/pamphlet/blood/pamph80.html